RUN TO YOU
急に、走りたくなった。
不甲斐なさも、今の僕の置かれてる現状も、過去も、願いも、未来も、全部引っ括めて、走り出したくなった。
思い付いた勢いでランニングシューズを履いて、bluetoothのイヤフォンを引っ掴んで外に出た。
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思いが連なったプレイリストを再生して走り出す。
家から通っていた中学校まで約3km、取り敢えずそこまで目指して。
ずっと真っ直ぐの田舎町だけど、この景色を眺めるのは卒業して以来。
ウルフルズの「ぼくのもの」で泣きそうになる。
丁度中学校に着いた時に流れたのがスピッツの「フェイクファー」。思わず力一杯駆け抜ける。
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この中学校を卒業して、今年でもう折り返してしまった。
この15年で僕の何が変わっただろう?
流れている音楽はその年月の間に好きになった、恋人もできた、でも今の僕に残ったものは?
僕はきちんと大人になれているだろうか。
あの頃の自分に逢ったときに果たして誇れるだろうか。
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そこから母校の小学校に回ってみる。
中学校からは700m。
僕が通っていた旧校舎は建て壊されているけれど、グラウンドはそのままだった。
頭の中で運動会をイメージしながら全力で1周してみる。
生温いけど少しだけひやっとした空気が気持ち良い。
グラウンドを出て、当時の下校ルートをそのまま帰ってみる。
小学校から家までも約3km。
クールダウンも兼ねて歩いて帰る。
道のりには延々と言っていいほど竹林がある。
あの頃に戻ったみたいで懐かしい。
雨の次の日なんか、竹を蹴って葉っぱに乗った水滴を落として遊んでいたっけ。
至る所で道草して冒険して。
わざと犬に吠えられ追いかけられて、それだけで楽しかったあの頃。
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asian kung-fu generationの「遥か彼方」、サビで全力疾走する。
外灯もない田舎町で転びそうになりながら、楽しかった。気持ち良かった。
走っていて気持ち良いなんて、人生で初めてかもしれない。
運動不足の身体で、脚が棒みたいになったけど、何とも言えない多幸感があった。
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定期的にとは言わないけれど、フラストレーションが溜まったらまた走ろう。
そうやって少しずつ近づいていく。
僕は変わりたい。新しい世界が見たい。
"i wanna run to you
won't you hold me in your arms
and keep me safe from harm."