捨てられない
僕は本当に物が捨てられない男である。
所謂一つの、"断捨離"ができないのだ。
"部屋の乱れは心の乱れ"とも言うが、だとすれば僕の心は常に嵐が吹いて竜巻が起こって乱れに乱れているのかもしれない。それくらい物が多い男だ。
どれくらい物が多いかと言うと、素敵な日に大切な人から何気なしに買ってもらったジュースのペットボトルが捨てられない。「大変ですね」とよく言われる。
かと言って頻繁に部屋の物たちに触れたりするかと言うとそんな事はない。普段頭の中にはないし、寧ろ気付かぬうちに無くなっていた方が精神衛生上良いくらいだ。
「じゃあ捨てなさいよ」とツッコミにも似たお叱りが飛んできそうだが、僕自身を俯瞰で見たときに、"無くなるのは構わないのだけど捨てるという行為がとても嫌だ"という事に気付く。
幼い頃、スーパーファミコンを触っていた言うことを聞かない僕に対して、父はそのスーファミをあろうことか窓から放り投げてしまった。もちろん僕は大泣きである。
僕の父も母も、物に対する拘りは薄い。ダメになってしまったら新しいものを買えば良いじゃない、と言うけれど、僕はその物に思い出も一緒にくっついていると思っている。"one"ではなく"it"なのだ。
その反動からなのか、家族の中で物に対する固執は僕が一番強い。僕の部屋だけが床が抜けそうなほど物が多い。一周回って、それが僕のアイデンティティだと思ったこともある。
でも正直、物以外にもたくさんのものを背負いすぎた。単なる物理的な重さだけじゃなくなってきている気がする。そろそろ色々と下ろして楽になってもいい頃かもしれない、と思うようになった。もっと身軽に。そしたら世界はちょこっと変わるはずだ、なんて。